新型肺炎への感性拡大後、世界的に経済面についての明るい情報がない状況が続いていますが、ここに来て、ドイツの景況感についての明るいニュースが出てきています。
企業の景況感、消費者の景況感ともに、6月から上昇方向に転じているのです。
ドイツでは、2月初旬まではコロナは遠いアジアの国で起こっている事という感じで危機感はほとんどなかったのですが、その後感染者はあっという間に増え3月半ばより約5週間のロックダウンとなりました。
ロックダウン明けの5月頃まで経済面でのダメージは大きく、先日発表された今年前期のGDPは大きくダウン、景況感も企業、消費者ともにリーマンショック時よりも大きく落ち込みました。
そんな状態が、この6月から好転しているのです。
1.ifoビジネス景況感指数
まずは、ifoビジネス景況感について。
ドイツの公的経済研究機関であるifo (ドイツでは"イフォ"と読みます) 経済研究所が毎月発表する経済指標である景況感指数が、6月、7月とプラスを記録しました。
下のグラフで、大きく落ち込んでいるのが2020年5月で、その後は大きく回復しています。
ifo景況感指数について少し詳しく説明します。
これは、ドイツの製造業、サービス業、卸・小売業、建設業の企業9,000社への聞き取り調査を基としています。調査対象企業は、現在のビジネス状況について「良い」「満足できる」「悪い」、今後6か月の期待感について「好ましい」「変わらない」「好ましくない」のそれぞれ3段階で評価し、その回答結果から景況感を数値化します。現時点では、2015年を100とした指数で示されています。
ifo経済研究所はドイツ政府から独立した非営利の研究所で、毎月発表する景況感指数は、ドイツの経済予測で最も信頼を置かれている指数です。
景況感がコロナ以降初めて好転したというニュースが流れた6月の時点では懐疑的な声も多かったのですが、7月も引き続きプラスを示した事で今後のさらなる回復への期待が広がっています。
7月の景況感発表から数日後にGDP落ち込みの発表があったので、景況感アップのニュースは何となく霞んでしまったところもあります。でも、GDPはロックダウン時期を含む過去の結果報告ですが、ifo指数は今、そしてこれからを示す指数で、これからの事への期待の方がずっと大事だと思います。
好転の背景には、ドイツビジネスの基幹である見本市の再開目途が立ったことも大きく影響しています。
2. 消費者景況感
企業だけでなく、消費者の景況感も好転しています。
市場調査機関GfKが毎月発表する消費者景況感も、2月、3月、4月とマイナス傾向で、5月にこれまでにない大きな落ち込みとなった後、6月からは上向きになっています。
消費者景況感指数は、天気に例えて表されていますが、現時点の状況は嵐や雨を経て曇り空の状況ということです。
このグラフの見出しにある通り、ドイツでは今年7月より12月末まで、日本の消費税に相当する付加価値税(VAT)が19%から16%へ減税となることが6月に決まりました。
この消費税のカットが、消費者の今後の期待感を高めていると考えられています。
3.デジタル業界景況感
デジタル業界景況感は、ドイツのデジタルビジネス協会bitkom(ビットコム)と、1.で紹介したifo経済研究所が提携して算出している指数です。
IT、コミュニケーションといったデジタルビジネスにおいてもコロナ感染拡大によるダメージは大きかったのですが、6月以降は好転しています。
上のグラフでは長期間に渡る推移が示されており、リーマンショックに象徴される2008年前後よりも、今回のコロナ危機(ドイツではすでに「コロナ危機」と呼ばれています)のダメージの方が大きくなっていることがわかります。
一方で、リーマンショック時の落ち込みはやや長い期間続いたのに対して、もし本当にこのまま好転が続くのであれば、コロナ危機時の落ち込みは短期間に大きく落ち込んだだけで、今後はその分大きな反動も期待できるのではないかという見方もできます。
このグラフのタイトルは、直訳すると「コロナ危機が歴史的な切り込みをマークしている」となります。
グラフの説明という事では、「切り込み」のような形を描いていることをさしていますが、この「切り込み」を示すドイツ語の"Einschnitt"には、「区切り」という意味もあります。
ここで、「史上最大の『落ち込み』」とか「ダメージ」ではなく、「切り込み」「区切り」を指す言葉"Einshnitt”が使われていることに深く共感しました。
コロナの影響がひとつの区切りとなって、新しい世界が始まるという事なのだと思います。
その新しい世界でもビジネスを成長させていけるように、しっかり情報収集して準備を進める事が、今とても大切なのではないでしょうか。
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