青山 香織
アンサンブラウ イベント+マーケティング
オミクロン株の脅威に直面したドイツ・欧州の2022年の始まりですが、そうしたビジネス環境の変化を受けマーケティングの世界にも大きな変化が生まれています。
今回はドイツ・欧州のBtoBマーケティングの最新動向について紹介します。
BtoC商品を取扱われる企業さんも、新規に海外市場に参入する場合は、現地ディストリビューターの獲得というBtoBマーケティングが最も重要なステップとなりますので、ドイツ・欧州市場での販売拡大を目標とされる全ての企業の皆様のお役に立てる情報だと思っています。
これまで海外での販売は見本市での出展のみに頼られていた企業の方にとって、コロナ禍で見本市が相次いでキャンセルとなったこの2年間は、現地の空気を感じにくくご苦労も多かったと思います。
見本市が開催されなかった環境下で、ドイツそして欧州のマーケティングの進め方はデジタル化の波と共にこれまでとは異なるアプローチが生まれつつあります。
現時点では見本市の多くがオミクロン株感染拡大への懸念から中止や延期となっていますが、2021年の夏から秋にかけてはコロナ前の日常が戻りつつあり、その時に見本市も再開され、それぞれ収穫の多い見本市となっています。
いよいよ今年から見本市も徐々に再開の方向で進んでいますので、その時にしっかり、他の企業に後れを取らないように、こちらの記事をご参考にしてくださると嬉しいです。
では本題に入ります。
2022年のドイツBtoBマーケティングトレンドとして、次の6つのキーワードが挙げられると思います。
1.サステナビリティ
2.ソーシャルコマース
3.企業(コーポレート)インフルエンサー
4.パーソナライゼーション
5.「クッキー」後のウェブ広告
6.ハイブリッドイベント
こちらの記事ではまず、前半の
1.サステナビリティ
2.ソーシャルコマース
3.企業(コーポレート)インフルエンサー
について少し詳しく紹介したいと思います。
トレンド1.サステナビリティ
「サステナビリティ」という言葉、ここ数年で私達の暮らしにしっかり定着した感があります。以前より環境保護意識の高いドイツでは、プライベートでの生活面だけでなくビジネスの取引の際にもサステナビリティが重要な価値観となってきています。
例えば最近では、アドビ社と調査会社によるBtoB購買決定者を対象とした調査で、68%がCO2排出量削減のためにオンラインでの発注を心がけていると回答しています。さらに、ここでいうサステナビリティは環境面への配慮だけにとどまらず、原材料や製造に関わる労働状況などが健全であるかどうかという点も大きな判断材料となってきています。実際にドイツをはじめとした欧州企業とお取引をされる時にお気づきになられた方もいらっしゃると思いますが、最近は供給業者登録の際にサステナビリティへの取り組みについて示すことを求めるドイツ・欧州企業が増えています。
将来的にはBtoBでの購買決定の最優先要素となる可能性もあるサステナビリティへの取り組みが、今後のBtoBマーケティング成功の大きな鍵を握っているといえます。
例えば、サステナブルなロジスティクス施設を構築したり、環境に配慮した運搬・移動手段、Eバイクでの通勤を奨励しているなど、堅実な取り組みが企業の好感度、信頼度を大きく高めています。
製品の透明性がこれまで以上に求められます。製造過程での原材料そして製造に関わる人への配慮と尊重が重視され、さらに、包装の簡素化が、今大きな注目を集めています。
高品質の日本製品の場合、丁寧な包装もクオリティを高める要素となっている場合もありますが、今後は状況によっては、そうした配慮がマイナスの印象をあたえてしまうこともあるかもしれません。
環境に配慮した上での日本の良さを生かした包装が、今後の大変興味深いポイントのひとつだと見ています。
また、長期間使用が可能な製品の場合は、長く使い続けられるためのメンテナンスサービスもこれまで以上に重視される傾向にあります。
サステナブルな取り組みを進めると同時に、もう一つ大切な事は、そうした取り組みを明確にアピール、伝えていく事です。
製品を見ただけではわからない製造過程での配慮や企業努力を、顧客にしっくりいく形で明確につたえていくコミュニケーション能力が大変重要になってきます。
トレンド2. ソーシャルコマース
ソーシャルコマースとは、フェイスブックやインスタグラム等のソーシャルメディアを介して販売や販売促進を行うことです。コロナ禍に伸びたのがソーシャルメディアでのコミュニケーション。特にBtoCでは、ソーシャルコマースがひとつの大きなマーケットとして発達しました。
BtoCの勢いを追う形で、BtoB企業もソーシャルコマースに目を向け始めています。ドイツのBtoB E-コマースの定点調査であるBtoB Eコマース景況指数2021年調査で、ソーシャルネットワークを活用している企業は14%にとどまりましたが、同時に、調査対象の3分の1の企業は、ソーシャルメディアが今後5年間の間に重要になってくると認識しており、4分の3の企業がソーシャルメディアを新たに活用する予定であると回答しています。
上記、BtoB Eコマース景況指数の調査会社のデータでは、ドイツのBtoB企業が使用するソーシャルメディアは、一番がフェイスブック、次いでドイツ版リンクトインと言われるシング(Xing)、そしてリンクトイン、ユーチューブの順になっています。今後使用を考えているメディアとしてはユーチューブが最も多くなっています。
こうしたBtoBのソーシャルメディアコンテンツ、現状ではブランディングとネットワーキング目的での使用が主で、ソーシャルコマースとして機能するケースは僅かとなっています。しかしながら、ここで培った信頼性が今後顧客獲得につながる可能性は非常に高く、今後BtoBでの発注担当者がリンクトインのようなソーシャルメディアでの情報、つながりを重視し、従来からの広告よりも大きな効果を期待できるようになるかもしれません。
顧客獲得の視点から見逃せないのはユーザーエクスペリエンス。ソーシャルコマースの実現にはソーシャルメディアでのユーザーエクスペリエンスが重要で価格や情報の透明性が求められます。必要な情報を写真やビデオまたは一つのテキストにまとめる形、またオンラインショップへの同期や誘導がソーシャルメディアでの顧客獲得のポイントとなります。
トレンド 3: 企業(コーポレート)インフルエンサー
BtoCでのインフルエンサーはすでにドイツでもお馴染み。
パメラ・ライフさんのように世界的に人気のドイツ人インフルエンサーもいます。筋トレエクササイズの動画(ロックダウン中のエクササイズでお世話になりました)で人気となったパメラさん、現在はフィットネスの分野だけでなく食品のプロデュースや料理本の出版、ミュージシャンのプロモーションなど幅広い分野で活躍中です。
特に10~20代の消費者に向けて機能しているインフルエンサー効果を、リクルーティング目的を中心に企業が活用する動きが出てきています。「コーポレート(企業の)インフルエンサー」などと呼ばれています。
コーポレートインフルエンサーは、パメラさんのようなセレブ的な存在ではなく、自社の従業員を任命する場合が殆どです。実際に働いている社員が、自分の言葉で企業文化や職場環境、やりがい等について発信していく事で、自社の信頼性を高めていく事を目指しており、特に求人への効果が期待されています。
担当する従業員の人選やモチベーションの維持、炎上してしまった場合のリスク対策など課題は多いものの、新しい企業PRとして今後伸びていくかもしれません。
こちらはアパレル・生活用品eコマースの老舗、オットーの企業インフルエンサーです。同社では2017年より100名の従業員をコーポレートインフルエンサーに任命、リクルーティングが中心ではありますが、従業員による自発的な(とはいえコントロールはしていると思いますが)情報発信を奨励しています。
コーポレートインフルエンサーは、現在のところリクルーティング、人材確保のために活用されるケースがほとんどですが、今後は企業間取引にも従業員や関係者の生き生きとした姿や意見が大きく貢献するようになる可能性は大きいと思います。
次回は後半、
4.パーソナライゼーション
5.「クッキー」後のウェブ広告
6.ハイブリッドイベント
についてご紹介します。
●後編はこちら ぜひお読みください!
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