青山 香織
アンサンブラウ イベント+マーケティング
いよいよ今週末、世界最大の食品見本市アヌーガ(ANUGA)がドイツのケルンで開催されます。
開催に先駆け、アヌーガ主催者と提携するオランダの調査会社が発表した2023年のフードトレンドについてご紹介します。
このトレンドは欧州だけでなく世界全体での調査を基にした世界的なトレンドです。
アヌーガ自体、ドイツ国内だけでなく世界中から有力なバイヤーが集まる見本市ですので、見本市開始前に世界的なトレンドを抑えておく事をお勧めします。
2023年のグローバルな食品市場のトレンドとして挙げられているのは、次の10のキーワードです。
*トレンドキーワードは抽象的な表現を使う事が多いので、日本語は各トレンドの説明を踏まえて、原文の英語の直訳ではなく意訳にしています。
<2023年グローバル食品市場トレンド>
- 新しい価値観(原文:Redefining Value)
- 手頃にヘルシー(Affordable Nutrition)
- デジタル世代(Generational Push)
- プラントベース: 新局面へ (Plant-Based: Unlocking a New Narrative)
- 未来を農業・育てる(Farming the Future)
- すぐ作れて良い品質 (Quick Quality)
- デジタルを貪る(Devouring Digital)
- リベンジ支出(Revenge Spending)
- 迷いのない健康(Unpuzzle Health)
- 前向きな不完全(Positively Imperfect)
世界的にインフレが進む中、低価格の食材や料理を選んだり、自炊の機会を増やすなど飲食にかける費用への節約志向が高まっています。一方で、新しい味覚への興味・好奇心、健康志向の高まり、環境配慮への関心は着実に進んでいます。
食品市場では今、消費者に受け入れられる価格を維持しながら、様々な興味や価値観に応えていく事がポイントとなってきています。
トップ3のトレンドを中心に、少し詳しく紹介します。
ナンバー1. 新しい価値観
物価上昇が目立つ今、消費者は価格に対しこれまで以上に敏感になっています。一方で、環境への配慮やリサイクル・再利用といった新しい価値観に対しては価格は気にせず歓迎する傾向がどんどん高まっています。「低価格」と「新しい価値観の実現」の間で、消費者がどこを妥当としているのか。これを見極めることが今、食品メーカーにとって一番重要だと当レポートは強調しています。
価格変化による販売促進は、短期的には有効かもしれませんが長期的には困難に直面する場合が多いと思います。消費者は、食品の含有物、サステナビリティへの取り組み、品質に注目しており、それらの点を明確に伝えるメッセージを持つ食品の信頼感、安心感を求めています。
価格に敏感になる一方で、消費者はささやかな楽しみを求めます。8番目のリベンジ支出というトレンドは、楽しいことや手に入りやすい体験にますます消費者が惹かれている傾向を示しています。すでに馴染みのある食品のユニークなコラボレーション商品や限定版が、気分を高揚させ新しい商品として人気を集めています。
ナンバー2. 手頃にヘルシー
健康志向が高まる中、消費者は手頃な価格のヘルシーな食品を探しています。ヘルシーな食品=高価、高級という時代は終わり、食品メーカーは原料と生産プロセスを見直し最大価値を引き出す事が求められています。信頼性の高い認証マークの表示が信頼感や魅力につながっています。
手頃にヘルシーな食品を求める傾向は、9番目に挙げられている迷いのない健康にもつながります。健康志向ニーズを掴むには、次の3つが特に重要とされています。
1) 商品の明確な情報提供
2) 信頼度の高い健康関連の組織による認証
3) 消費者の体験を基にしたポジティブな評価
ナンバー3. デジタル世代
原文(Generational push)を直訳すると「世代間のプッシュ」となりますが、ここで示しているのは、どちらかというと新世代のプッシュ、若い世代からの勢い、という意味合いが強いです。
インタラクティブなデジタルの世界で育ったZ世代やミレニアル世代といった若い世代が市場全体のトレンドを生みだす時代となりました。
彼らにとって、食品やブランドの選択は自分のライフスタイルや信念、価値観を示す重要な指標となります。また、SNS等で自分の意見を広く公然と共有することにも慣れています。
ヘルシーである事が購買の原動力としてますます重要になっている一方で、新しく、これまで知らなかった国際的な食材も若い世代の心を掴んでいます。新しいものや異なるものを受け入れ、ブランドからの積極的なアプローチにオープンなZ世代、ミレニアル世代へのアピールが今後さらに重要になってきます。
デジタルに関しては、デジタルを貪るという未来志向の焦点もトレンドのひとつ(7番目)に挙げられています。より没入感のある仮想世界が創造され、現実にも影響を与えている今、究極にパーソナライズされた栄養食品や、消費者とつながる新しいプラットフォームなど、デジタル体験が無限の可能性を生み出します。
未来志向で見ると、5番目の 未来を農業・育てるもあります。健康的であること、フェア(公平)であること、持続可能性(サステナビリティ)、廃棄問題などへの解決に結びつくように、生産技術や農業の方法を改良・強化することで、生産者、消費者、そして地球にどのように利益をもたらすかを示していくことが求められています。
パンデミック中に芽生えた自炊人気は継続していますが、これからはパンデミック後の日常生活に合わせた形が求められています。6番目のすぐ作れて良い品質が示すのは、忙しい毎日の中で短時間で調理できる新鮮・良質な食材を求めるトレンド、ミールキットの流行が象徴しています。
新しい食材のひとつとして、4番目のプラントベース: 新局面へのトレンドが挙げられます。プラントベース食品市場は急速に成長しており、アヌーガでは今回、「グリーンガストロノミー」として独立したスペースを設けています。消費者としてはさらに味と食感の改善を望む声がありますが、一方で料理の創造性や国際的フレーバーをアピールする材料として大きな需要が見込めます。
価格戦略に加えて、持続可能性実現が求められる非常に大変な時ではありますが、こうした複雑さや困難について現状をオープンにする姿勢が受け入れられるようになっています。トレンドの10番目、前向きな不完全がそれにあたります。消費者は今の課題や懸念を解決するには複雑な要素が絡んでいることを理解しており、メーカーの努力する姿勢を評価するようになってきています。現時点で100%完璧であることを期待していません。期待するのは100%を目指そうとする姿勢です。長期的な視点で改善に向けた行動をとっている事を分かりやすく伝えることで、好意的な反応を得られます。
かなりかみ砕いて説明してみましたが、原文のトレンド分析がかなり抽象的な書き方をしているので、わかりにくい点もあるかもしれません。
わかりにくいところは、どうかお気軽にお問合せください。
アヌーガ、そして食品分野に携わる皆様の海外戦略の参考にしていただけると嬉しいです。
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