これからのテキスタイル素材③

 

市場調査チーム

アンサンブラウ イベント+マーケティング

 


 

これからのテキスタイル素材、前回の続きです。

 

7.従来の素材を見直し再生させる

既存の農業や産業が生む廃棄物の流れを利用して、新しい素材を生む方法の探求例です。

 

これまでは生産に伴う副産物は廃棄されており、世界的な廃棄物問題に発展しました。利用できる廃棄物を再び生産に戻すことで、既存の資源をより効果的に利用し、廃棄物の概念自体を回避することができます。

 

Malai(マレイ)

写真:https://malai.eco/products/malai-sample-pack

 

南インドのココナッツ農家と提携するインド・ケララ州に拠点を置くマレイは、廃棄されたココナッツウォーターからアパレル産業向けのビーガンで堆肥化可能なココナッツレザー素材を作成しています。

 

有機バクテリアセルロースから開発された新しい素材「マレイ」はインドのココナッツ産業の農業廃棄物によって育ちます。ココナッツの実が収穫された後に廃棄されてきたココナッツウォーターを貯め、滅菌し、バクテリアを培養、最終的には柔軟かる耐久性があり、革のような質感で防水性を持つシートを生産します。美しく魅力的な、完全に自然素材で、シームレスな3Dオブジェクトに成形でき、10の天然染料で染めたさまざまな色合いで提供されています。

 

 

Studio Sarmite(スタジオ・サーマイト)

写真:https://studiosarmite.com/

 

フランクフルトのスタジオ・サーマイトは、有機および合成産業廃棄物を高品質な新しい素材に変える素材を探求するスタジオです。

 

デザイナーのSarmite Polakova氏によって率いられるこのスタジオでは、すべての資源は新しいものを作るために使用できるべきと考えています。同スタジオの素材”(UN) WOVEN" は、ごみの埋め立て地に送られる予定だった、これまでは再利用できないとされていた繊維から作られたリサイクルバイオ素材です。革のような触感の素材は、リサイクルプロセス中に抽出された天然顔料で染められ、魅力的な色と遊び心のあるパターンを作り出しています。使用後には水に溶かされ、新しい生産サイクルのために再利用されます。

 

DESSO by Tarkett(デッソ・バイ・タルケット)

 写真:https://professionals.tarkett.com/en_EU/node/the-beauty-of-circularity-sustainability-campaign-18225

 

クローズド・ループシステムで市場を牽引する、グローバルなフローリング会社タルケットは、素材のライフサイクルを考慮して素材を作り出しています。

 

カーペットタイルであるデッソ・バイ・タルケットは、デザインプロセスの初めから循環性を考慮、 同社のEcoBase® バッキングとパイルは、長期間の使用に耐え、使用後には分解でき、自社のカーペットリサイクルセンターの再生産サイクルに地元の飲料水産業からの産業廃棄物とともに戻ります。。同社の最新の製品であるAirMasterは、複雑な織り技術を使用してダスト粒子をキャプチャし、室内の空気品質を向上させます。

 

8.ラディカルな透明性

材料のライフサイクルの完全な工程を伝える、世界規模で追跡可能な材料供給チェーンの実現を目指す取り組みです。

 

サプライチェーンに沿ってデータを捉え、記録するためのツールやプロセスを作成することで、我々は消費する材料の社会および環境への影響を理解することができます。材料を暗号化することで、ブランドはその足跡とライフサイクルを追跡し、この情報を意味があり、信頼でき、アクセスしやすい方法で顧客に伝えることができます。

 

Haelixa(ヘリックサ)

 写真:https://www.haelixa.com/textile-industry/

 

スイスに拠点を置くヘリックサは、化学のバックグラウンドを持つ医師によって設立され、DNAを革新的に活用したサプライチェーンの透明性と追跡可能性の向上を目標としています。

 

ヘリックサの技術は、サプライチェーンに沿って製品を追跡し、認証します。各サプライヤー、ブランド、コレクション、または素材に対して独自のDNAコードを作成し、それを製品や環境、人間に害を与えないよう、カスタマイズされたスプレーシステムを適用します。情報は法科学のPCR技術によって検証でき、原産地、プロセス、リサイクル、真正性などの製品情報をサポートし、テキスタイル、宝石、貴金属に応用しています。

 

FibreTrace®(ファイバートレース)

 写真:https://www.sebastiancox.co.uk/

 

 

ファイバートレースは、デジタルなトレーサビリティと物理技術を結びつけ、原材料から小売店、再利用、リサイクルまで、世界のサプライチェーン全体でテキスタイルを追跡および検証します。

 

透明性、誠実性、責任感に焦点を当てたFibreTrace® Verifiedは、特許取得済みの蛍光性顔料マーカーを生の繊維に埋め込み、それをスキャンデバイスでリアルタイムに追跡および検証し、デジタルツインとして記録します。 同システムで作成された各製品は、それぞれのQRコードを生成し、最終製品にも使用しており、顧客はスキャンすることができ、製品の経緯や製造に関与したすべてのサプライヤーの詳細を共有できます。 

 

Avery Dennison(エイブリー・デニソン)

写真:https://rbis.averydennison.com/

 

世界的な素材化学企業エイブリー・デニソン社のスマートラベリングソリューションは、ブランドがより透明で追跡可能な方法を促進し、伝えるのに役立ちます。

 

同社のデジタルケアラベルは、BYBORRE®、Mara Hoffman、Swijinなどのファッション、テキスタイル企業と協力し、ブランド独自のデジタルエクスペリエンスへのアクセスを提供します。これらのラベルには、atma.ioと呼ばれるクラウドによって可能にされた一意のスキャン可能なQRコードが組み込まれており、消費者はスマートフォンを使用して豊富な情報にアクセスできます。製品の完全なサプライチェーンの経過、素材の構成とケアの指示、および製品をできるだけ長く循環させるための修理、リサイクル、再利用の方法に関する情報が含まれています。

 

9.ローカリズム(地域主義)の育成

地元で採取および処理された地元の材料が人々と地球に良い影響を与えることを目指す取り組みです。

 

材料の地元調達、生産、消費を支援することで、世界的な長距離輸送を避け、炭素フットプリントを削減できます。可用性、季節性、地元ならではの智恵に焦点を当てることは、標準化されていない事を受け入れ、また地元の環境を改善につながります。

 

Material Cultures(マテリアルカルチャーズによる藁製品)

写真:https://materialcultures.org/category/design/

 

マテリアルカルチャーズは、英国に拠点を置くデザインスタジオで、デザインサービスの提供、建設・リフォームの実施しています。再生可能で低炭素の建築環境を開発および提供したいと考える公共機関、私企業、第三セクター組織と協力しています。

 

わらを使用した作品は、長期間の炭素固定と貯蔵のための手頃で実現可能な低技術ソリューションの例を紹介しています。英国だけで年間約700万トンの小麦由来のわらが生産されており、この植物ベースの素材が従来の石油化学ベースの建設技術を置き換えることができれば、建物自体を世界的に重要な炭素吸収源に変えることができます。

 

Studio Sanne Visser(シュトゥーディオ・ザネ・フィザー)

写真:https://www.instagram.com/p/CrRoJ0ToVhq/?img_index=1

 

オランダのデザイナー、ザネ・フィザーは、材料のイノベーション、持続可能性、未来志向に焦点を当てた製作者かつ研究者です。

 

2022年にはロンドンのデザインミュージアムのデザインリサーチャーとして、「Locally Grown」と呼ばれるプロジェクトで、廃棄物となった人間の髪を再利用可能な素材資源として探求し始めました。美容師や理髪店のコミュニティと協力し、切られた髪を収集するための理髪師の椅子をデザインし、さらにコミュニティと協力し、髪を必要に基づいて分類するための仕分けシステムを開発しました。伝統的なロープ製造技術を使用して毛髪を材料とする毛糸や手紡ぎの糸を作り、髪繊維を織物、インテリア製品、さらには犬のリードにも変え、採取されたコミュニティ内販売されるようにしました。

 

Atelier NL(アトリエ NL)

アトリエNLは地元の材料の価値を認識し、土の要素を日常のオブジェクトに再構築することで、自然界の微妙な変化を反映させるデザインスタジオです。

 

ナディン・スタークとロニー・ヴァン・リスヴァイクによって共同設立された、オランダのアイントホーフェンを拠点とするこのスタジオでは、文化的な遺産を尊重し、地球資源への感謝の気持ちを醸成するために、ガラス製造には地元で採取された自然の砂を、陶磁器には地元の粘土を使用しています。同スタジオのClay Serviceは、ヨーロッパ中から集められたさまざまな粘土から作られた手作りの食器セットで、各粘土はその地質学的、歴史的、社会的な重要性に基づいて選ばれています。地元の土壌の化学成分によって色が大きく異なり、各ピースにはその起源地に直接リンクするスタンプが押されています。

 

以上になります。

かなり駆け足での紹介になりましたが、主に欧州で今動いている新しい素材についてご興味お持ちくださったら嬉しいです。

同じような取り組みが、すでに日本でも多くされていると思います。そうした製品、ブランドが今、欧州で、世界で受け入れられやすくなっている時で、大きなチャンスだと思います。

今回、そして次回以降のハイムテキスタイルで、日本初の様々な未来の素材が活躍することを、こころから応援したいと思っています!

 


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